Narihiko YOSHIDA

CEO 吉田就彦のマーケティングウォッチ

2015.05.28

21世紀のビッグデータを考える②「ビッグデータと時間軸」

前回からの続きで「21世紀のビッグデータを考える」がテーマです。
今回は具体的な事例を交えて、ビッグデータの取り扱い方を書いてみたいと思います。

<21世紀の資本>
まず、ベースとなるトマ・ピケティ著「21世紀の資本」についての簡単なまとめとビッグデータとの関わりから入りたいと思います。

すっかり有名になった不等式 r>g に「21世紀の資本」の本質は集約できると思います。
rとは、資本収益成長率であり、gはその経済の成長率です。

ma20150528

この不等式に表されたrがgを上回る時に、格差(元本の中では不平等)は広がるとの論旨が、この700Pにも及ぶ大著の最もコアの論旨と言えるでしょう。
つまり、土地や株などの資本が生み出す家賃や利子、配当等の収益成長率が、労働者が働いて稼ぎ出した所得やプロダクトの付加価値による産出の増加率であるその経済の成長率を上回る時に、国内で、国家間で、すなわち世界の至る所で、格差が生まれ拡大すると指摘しているのです。

その明確な論旨の根拠となるデータは、3世紀を超えるイギリスとフランスの資産の贈与税収のデータから始まり、アメリカは勿論、ドイツ、日本等の先進国だけに関わらずインド、インドネシア、中国等の20ヵ国を超える国の経済データやアジア、アフリカ、アメリカ大陸、ヨーロッパなどの地域毎の経済統計データです。

特に、3世紀におよぶ植民地を抱えた2国の富の変遷や各国を襲った世界恐慌や世界大戦の影響等を勘案したデータの説得力は、同時に語られるマルクス、クズネッツと続く歴史的な経済学者の経済理論の変遷や時の政府の政治のベクトルとともに、長い間の人類の経済的営みの集積としてインパクトのあるものになっています。

次に、「21世紀の資本」で取り上げられているビッグデータの扱いといくつかの事例を踏まえて、今後のビッグデータの在り方を考えて見たいと思います。

<ビッグデータと時間軸>
説得力を持った「21世紀の資本」の論旨を支えたデータの一番のインパクトは、やはりその時間軸の長さにあると言えるでしょう。
変化の速い現代、そんな速い時代だからこそ、3世紀間を超える膨大な長さの時間を追っていったデータの意味は大きいわけです。
株式会社エーピーピーカンパニーの小島豊美氏がマーケティングホライズン3月号に寄稿されている「江戸東京重ね地図」「江戸明治東京重ね地図」データベースの存在意味もその論点で同様と言えます。
(小島氏の寄稿にご興味がある方はマーケティングホライズン3月号をご覧ください。)

同じその場所の時間的な地図の変遷を見ていくことにより、その土地土地の歴史を知ることができ、なぜそこがそうなったかの理由により様々なモノが見えてくるわけです。
それは江戸から明治に至る政治体制の革命的な転換であったり、太平洋戦争という大きな国家的なインパクトの結果であったりもします。
この重ね地図により、その土地が持つ歴史や感じられる人の営みの変化がビッグデータにより明らかになったのです。

時系列データの長期にわたる活用は、鳥取大学石井晃教授の「AKB選挙予測で培ったソーシャルメディアデータの使い方」の選挙結果予想の論考でも時間軸を意識したビッグデータ活用の本質をよく表しています。
2年続けて取り組んだ選挙結果で、2年目がその前年の結果に影響を受けないはずもなく、その年間を通じてのデータ取得の蓄積が、時系列的に現れるファンの得票傾向を予見し最終的な投票結果予想へと繋がるわけだからです。

特に石井教授の研究では、間接コミュニケーションによるクチコミの力がファンの投票行動の予想に重要であるとの結果であり、世の中の気分をよく表すと思われるソーシャルメディアのデータを見ていく際に、時系列データの変化をうまく捉えていないと精度のある予測にはならない事を示しています。

次回に続きます。

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