Narihiko YOSHIDA

CEO 吉田就彦のマーケティングウォッチ

2015.05.18木暮人倶楽部

木を食べる「虫」たちについて

さて、ゴールデンウイークも過ぎ、少し空きましたが本日は「虫」がテーマです。

私は、一般社団法人の代表も務めているのですが、それが今回のブログのテーマ「虫」に大きく関わる一般社団法人木暮人倶楽部(こぐれびとくらぶ)という木の団体です。

木暮人倶楽部HP https://www.kogurebito.jp/

今日は、そんな私の少しアナログなプロフィールに関する「虫」の話を書きたいと思います。

皆さんはキクイムシという「虫」をご存知でしょうか?
木を食べる虫のことですからキクイムシというわけですが、日本には300種以上生息しているといわれています。その「虫」とは異なりますが、木を食べる「虫」として一般的に一番有名なのはやはりシロアリでしょうか。
住宅の土台などの木材を食い散らかして時にはその住宅の土台を崩壊させてしまう住宅にとってはとんでもなく危険な存在です。
シロアリ駆除のことは、一軒家をお持ちの方は深刻な問題として一度や二度は聞いたことがあると思います。
特に、日当たりがあまり良くなくてじめじめしているところなどにはシロアリが巣作ってしまうケースが多く見受けられ、大規模な駆除に苦労なさっている方もいるようですね。

そんな木を食べる「虫」たちですが、その「虫」と木との食うか食われるかの関係には意味深い生物としての戦いがあることをご存知でしょうか?
木食い「虫」に食われない木というか木の部位があるのです。そのような部位をうまく使うことで例えばシロアリに食われにくい住宅もできるのです。

そもそも木という生き物は面白い生物といえます。勿論植物の仲間ですが、まず巨大です。
現在生き残っている地球上の生物の中でも最大の生き物と言えます。さらには長寿、何千年も生き続けている生物は他にいません。
屋久島の縄文杉が有名ですが、あの7千年というのは一説には2本の木が合体した姿ということを指摘している研究もあるようですが、それにしても軽く3千年はゆうに超える杉が存在している事実を我々は目の当たりにして驚くわけです。

木を輪切りにしてみると木は心材という中央部と辺材、そして、周りを覆う皮の部分樹皮とがあることはよく知られています。杉などの針葉樹では、屋根や外壁に使うこともある皮と色が白い辺材、少し赤みがかった心材というようにきれいに分かれています。

木の成分は、基本的にはセルロースとヘミセルロース、そして、リグニンという高分子物質でできています。
その物質でできた細胞の中を栄養分や水分が上下して、葉による光合成でできた栄養分により木はあのように大きく成長するわけです。

ところで生命体としての木ですが、その中心部分である心材の細胞はすでに死んでいて生きていないということを皆さんはご存知でしょうか?
木は辺材の外側、そして、皮と辺材の内側である形成層を中心に生きていて、中心部である心材は死んでいる状態なのです。
当然心材部は昔生きていた部位ですが、その心材になる細胞は死ぬときに栄養分であるデンプン等からフェノールやフラボノールといった物質を作り、それを自らの細胞に蓄えるということをします。そしてそれが今回のブログのテーマである「虫」に大きく影響するのです。

先ほど書いたように木は外側しか生きていないので、その外側は水や栄養素であるデンプンなどを多く含みます。しかし、木は死んでいった細胞をそのままの状態で内包しているわけではありません。ある意味ではちゃんと死の始末を自分でして、何千年も立っているのです。驚くことに心材に蓄えられた物質は、森に生息するキクイムシを寄せつめないのです。いわゆる忌避成分が虫の害から木を守るのです。

写真は、木が「虫」に食われている写真ですが、ものの見事に心材を迂回して辺材しか食べていないのがお分かりになると思います。つまり、木は外敵である木食い「虫」から少なくとも一部は食われても自らの構造の中に対策を施して進化してきた生き物であるということなのです。驚きとともに感動的でさえあります。

さらに言うと、このような木の性質をうまく利用して家を建てることによって、虫害に強い家を建てることができます。当然、心材をうまく多用して食われにくい部位を工夫して利用することや土から直接土台の木に「虫」が昇ってくる導線をシャットアウトすることなどです。

さらにユニークな使い方としては、その材自体を水分や栄養分が少ない状態にしてしまうことでさらに効果が高まります。
例えば、我々木暮人倶楽部の面々が多く取り入れている伐採・乾燥方法である葉枯らし乾燥などは、伐採後3ヶ月から6ヶ月ぐらい山で葉をつけたまま放置しておくことで、葉が枯れていく過程の中で木の乾燥が進み、養分や水分が木から出ていくことが研究により明らかになってきています。

このように、木造住宅にとって大変な問題であるシロアリ等「虫」の虫害を防ぐには、自然の木のメカニズムを知り、うまく活用する人の知恵があればうまくいくというわけなのです。自然の摂理を十分に知り、理解して、それを上手に活かしていく知恵が求められます。

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